「もう、在宅での介護は限界かもしれない…」そう感じた時、多くの人の頭に浮かぶのが「介護施設」への入所という選択肢です。しかし、いざ探そうとすると、特養、老健、グループホーム…一体何が違うのか、何を基準に選べばいいのか、途方に暮れてしまいませんか?
私もそうでした。右半身不随のうえに認知症が進行した父。どの施設が父にとって最適なのか、本当に悩みました。
この記事では、私が父のために介護施設を探し、最終的に「住宅型老人ホーム」という選択をした経験から、後悔しないために絶対に確認すべきだったポイントを、具体的にお伝えします。
- 施設選びは、本人の「病状」と「性格」に合うタイプを見極めることが最重要。
- パンフレットの情報だけでなく、必ず複数の施設を見学し、自分の目で「空気感」を確かめる。
- 医療連携体制は、持病がある親にとって生命線。看護師の常駐時間などを具体的に確認する。
- 費用だけでなく、本人がそこで「どう暮らすか」を想像できる場所を選ぶ。
なぜ施設入居を決断したのか
当時のケアマネージャーは、認知症を進めないためにも在宅の方がいい、という提案をしてきました。今となれば「なぜ?」しか思い浮かびませんが、私自身、経済的に父と同居するのは無理な経済的状況でしかなく、また施設入居への後ろめたさもあり、父だけ生活保護を受けてもらい、近所で一人暮らしをさせるという選択をしました。
しかし、父の認知症は予想よりも早く進行。昼夜を問わない着信や徘徊など、日に日に増えていく不可解な言動に、私の不安は募るばかりでした。
限界を告げた、ある朝の出来事
ある朝のことです。早朝にヘルパーさんから「お父様の部屋が水浸しになっている」との一本の電話がありました。仕事を早々に切り上げ、父の住む自宅へ向かうと、そこで目にしたのは信じられない光景でした。
テーブルやラックの中身、冷蔵庫の中身が散乱し、ポットの水やジュースが布団や床にぶちまけられ、ちょっとした床上浸水のようになっている。そして、部屋の隅には、失禁したのか、明らかに排尿した形跡が…。
しかし、父は至って平然としており、何が起きたのか全く理解していない様子でした。「なぜか目が見えなくなって…」と言う父の目の前に手をかざしても、何の反応もありません。それなのに、ニコニコしているのが、妙に怖かったのを覚えています。
翌日、かかりつけ医に父を連れて行くと、レントゲンを撮り終えた担当医から、開口一番こう言われました。
「今日は救急車で来ましたか?」
「いえ、私が運転してきましたが…」と答えると、「では、今すぐ救急搬送します。脳梗塞の恐れがあります」との宣告。これには驚きと疲れが一気に噴き出し、立っているのもやっとでした。
幸い軽度の脳梗塞で、父の意識もはっきりしてきましたが、私自身も心身ともに限界でした。父の安全を守るため、専門家の力を借りるしかないと、ついに決断したのです。
右半身不随の父のため、僕が重視した3つのポイント
ケアマネさんと相談しながら、私が特に重視したのは以下の3点です。
- 医療・リハビリ体制の充実度
父は右半身不随という長年の後遺症がありました。そのため、日常的な医療ケアや、機能訓練(リハビリ)を受けられる環境が絶対条件でした。見学時には「看護師は24時間常駐していますか?」「理学療法士は週に何回来ますか?」など、具体的な質問をしました。 - スタッフの雰囲気と専門性
パンフレットがどんなに立派でも、最終的には「人」です。私が見学でチェックしたのは、スタッフが入居者にかける言葉遣いや表情、そして何より施設の「空気感」でした。忙しそうでも、どこか温かい雰囲気があるか。入居者の皆さんの表情は穏やかか。これは、行ってみないと分かりません。 - 費用と本人の年金で賄えるか
非常に現実的な問題ですが、費用は無視できません。入居一時金はいくらか、月々の利用料はいくらか。そして、その費用を父の年金と、私の援助で継続的に支払っていけるのか。複数の施設の料金プランを比較し、現実的なシミュレーションを行いました。
最終的に「住宅型老人ホーム」を選んだ理由
いくつかの施設を見学した結果、私が父のために選んだのは「住宅型老人ホーム」でした。理由は、少人数制(15人程度)で家庭的な雰囲気が強く、認知症の方も居住していたからです。また、父が宿泊体験でも気分を害すことなく生活できていた様に見えたのも、大きな決め手となりました。
まとめ
今回は、私が父のために介護施設を選んだ経験についてお話しました。
- 本人の病状に合った施設タイプを見極める。
- 必ず現地へ行き、スタッフと施設の「空気」を感じる。
- 費用面での長期的なシミュレーションを怠らない。
施設選びは、介護における大きな決断の一つです。この記事が、あなたの後悔しない選択の一助となれば幸いです。


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