「最近、同じことを何度も聞かれるな…」「物の置き忘れが、ちょっと増えた気がする…」親の些細な変化に、一瞬よぎる一抹の不安。「年のせい」と自分に言い聞かせながらも、心のどこかで「もしかして…」と感じていませんか?
その不安、そして親を疑うような自分への罪悪感、痛いほど分かります。私も、父の変化に気づきながらも、長い間見て見ぬふりをしていました。
この記事では、実際に医師が私の父に行った「認知症の簡易テスト」の様子と、その内容に基づいた、ご自宅でさりげなく試せる「認知症の簡易チェックリスト」を、私の実体験を交えて具体的にお伝えします。
- これは医学的な診断ではなく、あくまで「気づき」のきっかけです。
- チェックリストは、さりげなく、会話の中で試すことが一番大切です。
- 複数の項目に当てはまる場合は、一人で抱え込まず、専門機関に相談する勇気を。
- 最も重要なのは、結果ではなく、親の変化に真摯に向き合うその姿勢です。
医師が父に問いかけた、あの日の光景
父の物忘れがひどくなり、かかりつけ医に相談した日のことです。診察室で、見た目はまだ若く、経験もあまりないように私には見えていた医師が、穏やかな口調で父にいくつかの質問を始めました。それは、私が想像していたような難しいテストではありません。ごく日常的な会話で、特別な難しさもありませんでした。
私には当たり前に、それこそ小学生が覚えているような内容に見えましたが、今思えば、あれが認知機能を確認するための、プロの質問だったのです。その的確な対応や、患者である父に真摯に向き合う姿は、この専門医でよかったと思えるに充分値するものでした。
隣で聞いている私は、目の前で起こる出来事に気づいていながらも、心のどこかでは「認知症ではないんだ」と思いたかったのでしょう。一つ一つの質問に答えられない父を見ながら、どんどんと認知症という現実に引き戻されていきました。血の気が引いていくように、自分の中での葛藤に負けていきそうでした。この時の私の経験を元に、あなたがご家族と向き合うためのチェックリストを作成しました。
自宅でできる、認知症の簡易チェックリスト
これは、あくまで家庭でさりげなく試すためのものです。「テストするぞ」と意気込まず、普段の会話の中で、自然に問いかけてみてください。日頃からチェックすることで、早期発見にも繋がり、心の準備もできます。家族として、日常会話の一環として取り入れてほしいと私は思います。
- 時間の認識:「今日は何月何日で、何曜日ですか?」
- 場所の認識:「今、私たちがいるこの場所は、どこだか分かりますか?」
- 短期記憶(単語):「今から言う3つの言葉(例:桜、猫、電車)を覚えて、後で聞きますね」
- 計算能力:「100から7を引くと、幾つになりますか?」
- 言語能力:「知っている野菜の名前を、できるだけたくさん言ってみましょう」
- 図形の模写:「2時を示している丸い時計を、紙に同じように描いてみてください」
- 短期記憶(再確認):「ところで、さっき覚えてもらった3つの言葉、何だったか覚えてますか?」
【最重要】テストの結果よりも大切なこと
もし、あなたの親御さんがこれらの質問にうまく答えられなかったとしても、決して責めたり、がっかりした態度を見せたりしないでください。誰よりも、本人が一番辛く、受け入れ難い状況になるはずです。
免責事項:このチェックリストは、医学的な診断に代わるものではありません。あくまで、認知機能の変化への「気づき」を促すためのものです。正確な診断は、必ず専門の医療機関を受診してください。
最も大切なのは、テストの結果そのものではなく、あなたが親の変化に真摯に向き合い、「何かおかしいな」と感じて、次の行動を起こすことです。
まとめ
- 親の物忘れが気になったら、簡易的なチェックで変化を確認してみる。
- テストは、あくまで「気づき」のきっかけ。診断は必ず専門医に。
- 最も重要なのは、変化に気づき、次の行動(専門家への相談)を起こす勇気。


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