「もしもし、◯◯警察署ですが…」日帰り旅行先でかかってきた一本の電話。ほんの少し目を離した隙に、忽然と姿を消してしまう。徘徊は、介護する家族にとって、心臓が凍るような恐怖と、終わりの見えない緊張を強いる行動です。
私の父も、認知症の進行と共に、徘徊を繰り返すようになりました。そしてついに、警察に保護されるという事態に至ったのです。
この記事では、私の父が徘徊し、警察に保護された日のリアルな体験談と、その経験から学んだ「万が一の時に家族がすべきこと、準備しておくべきこと」について、具体的にお伝えします。
- 徘徊は目的のない行動ではない。本人なりの理由や目的があることを理解する。
- 行方不明になったら、ためらわずにすぐ警察(110番)に相談・捜索願を出す。
- 事前に「徘徊SOSネットワーク」などに登録しておくことが、迅速な発見に繋がる。
- 本人の衣類や持ち物に連絡先を縫い付けておくなど、物理的な準備が命を救う。
旅行先で鳴った、警察からの電話
それは、父からの鳴り止まない電話に疲弊しきっていた気持ちを少しでも紛らわそうと、彼女と海水浴に行った帰りの夜のことでした。車を運転中に見慣れない番号から着信があり、私は一気に現実に引き戻されます。相手は、地域の警察署からでした。
鼓動が高まり、自分自身が焦っていくのが分かりました。「ああ、一番恐れていた事が始まった…」と。聞けば、父は家から100mほど離れた商店街を一人でフラフラと歩き、通行人の方に「家に帰りたいのですが、道がわからない。兄に電話して欲しい」と話しかけたそうです。その方が、警察に通報してくれたのでした。
警察署で対面した父は、自分がなぜここにいるのか全く分かっていない様子で、ただ「家に帰る」と繰り返すばかり。その姿に、私は怒りと同時に、どうしようもない悲しみがこみ上げてきたのを覚えています。
保護された時に家族がすべきこと
この経験から、万が一の時に家族が取るべき行動をまとめました。
- すぐに警察署へ向かう
身元引受人として、すぐに駆けつける必要があります。本人の身分を証明できるもの(健康保険証など)と、ご自身の身分証明書(運転免許証など)を持参しましょう。 - 本人の状況を正確に伝える
警察官に、本人が認知症であること、持病(私の父の場合は右半身不随)があること、普段飲んでいる薬などを正確に伝えます。今後の捜索協力のためにも、正直に話すことが重要です。 - 決して本人を責めない
警察官の前で、本人を叱責したり問い詰めたりするのは絶対にやめましょう。本人の尊厳を傷つけ、状況を悪化させるだけです。まずは「見つかってよかった」「一緒に帰ろう」と安心させてあげてください。
徘徊に備えて「今すぐ」準備すべきこと
この苦い経験から、私が「もっと早くやっておけば良かった」と後悔した事前準備です。
- 市区町村の「徘徊SOSネットワーク」に登録する:警察や地域の協力機関と連携し、行方不明時の捜索をスムーズにしてくれる制度です。お住まいの地域の役所に問い合わせてみてください。
- 衣類や持ち物に連絡先を付ける:本人の上着の裏や、靴の中、カバンなどに、油性ペンで名前と緊急連絡先(あなたの携帯番号など)を書いておくだけでも、発見が格段に早くなります。
- GPS機能付きの小型発信機を持たせる:費用はかかりますが、本人の居場所をリアルタイムで把握できるため、介護者の精神的負担は劇的に軽減されます。様々なサービスがあります。
まとめ
今回は、父の徘徊と警察に保護された実体験についてお話しました。
- 親がいなくなったら、迷わずすぐに警察へ。
- 地域の見守りネットワークへの事前登録が非常に重要。
- 衣類などへの連絡先の記入は、今日からできる最も簡単な対策。
親の命を守るため、そしてあなた自身の心を守るためにも、この記事が「転ばぬ先の杖」となれば幸いです。


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