【実録】「黒い人影が見える」母の幻覚に私がどう対応したのか。

認知症という病気

あなたの親が、突然そこにいないはずの「誰か」と話し始めたり、「人影が見える」と怯えたり…。そんな姿を目の当たりにしたら、あなたはどうしますか?どう対応していいか分からず、強い不安を感じてしまいませんか?

私もそうでした。パーキンソン病を患っていた母が、ある時から不可解な言動を始めたのです。

この記事では、私の母に現れた「幻視」という症状について、当時私が具体的にどう対応したのか、そして今だからこそ分かる「もっとこうすれば良かった」という後悔を、実体験に基づきお伝えします。

この記事のポイント
  • 親の幻覚症状を、頭ごなしに否定してはいけない。
  • 幻覚は、パーキンソン病やレビー小体型認知症の代表的な症状の一つ。病気のサインだと理解することが第一歩。
  • 本人の不安に寄り添い、まずは話を聞いてあげることが心のケアに繋がる。
  • 一人で抱えず、かかりつけ医や専門家に必ず相談すること。

「トイレで洗濯を…」母に起きた異変

私の母は70歳頃からパーキンソン病を患い、薬で症状を抑えながら生活していました。異変が起きたのは2016年頃のことです。

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当時の私
なんだか最近、母の様子がおかしい…。洗濯物が、なぜかトイレに置いてあったり、濡れたままだったり。最初は水でもこぼしたかと思っていたんです。

最初は特に気にしていませんでした。しかしある日、私は衝撃的な光景を目にします。母がトイレの便器の中で、下着をジャブジャブと洗っていたのです。まるで、当たり前のように。

思わず、私は強い語気で声をかけてしまいました。

「何やってるの!!何でトイレで洗ってるの!!汚いでしょ!」

しかし、母は気の抜けたような”ボーッ”とした表情で、こちらを見ながらこう言いました。

「どうしたの?洗濯しているだけよ?ここで洗濯するでしょ?」

この時、私は初めてはっきりと理解しました。「ああ、これが認知症なんだ」と。それから、母の言動は、壊れていくという表現が正しいかもしれません、日を追うごとにおかしくなっていきました。

「あそこに大きな人影がいて、天井で首を曲げてじっとこっちを見ているのよ」
「今、そこで子供たちが寝ているからそっとしておいて」
「私の布団で知らない男の人が寝てるから、私寝れないわ…」

もちろん、そこに人影も子供もいるわけがありません。怯える母の姿を見る日が増えていきました。

幻覚症状に対して、私が試した3つの対応

当時の私は知識もなく、ただ混乱するばかり。その中で、試行錯誤した対応は以下の3つです。

  1. 否定する(→結果:大失敗)
    最初は「そんなのいるわけないだろう!」「しっかりしてくれ!」と、つい強い口調で否定してしまいました。特に父は母の症状に嫌悪感をむき出しにし、ひどい時は暴力をふるうこともあったと、後日母から聞きました。当然ながら母は余計に混乱し、不安を募らせるばかり。これは完全に逆効果でした。
  2. 話を聞き、共感する(→結果:少し落ち着く)
    次に試したのが、「そっか、黒い人がいるんだね。怖いね」「大丈夫、僕もいるからすぐいなくなるよ」と、まずは母の見ている世界を肯定し、味方であることを伝えることでした。すると、母の興奮が少し和らぐことが分かりました。
  3. かかりつけ医に相談する(→結果:最も効果あり)
    最終的に、パーキンソン病でかかっていた神経内科の医師に、ありのままを相談しました。これが最も重要な行動でした。医師からは「それはパーキンソン病やレビー小体型認知症に伴う『幻視』という典型的な症状です」と説明を受け、幻視を抑える薬を処方してもらいました。ただし、強すぎる処方は意識が常にぼんやりし、ケガのリスクにも繋がるため、少ない量から調整してくれました。

今、当時の私に伝えたい「たった一つのこと」

薬で症状は多少改善しましたが、完全に消えることはありませんでした。もし今、あの時の自分にアドバイスできるなら、伝えたいことは一つだけです。

それは「一人で抱え込まず、もっと早く専門家に相談しろ」ということです。

親の奇妙な行動を目の当たりにすると、「自分の親がおかしくなってしまった」と認めたくない気持ちから、誰にも相談できずに孤立し、つい親へつらくあたってしまいがちです。これは、当事者ならではの辛いジレンマだと、今なら分かります。

しかし、それは認知症という病気が引き起こす「症状」の一つなのです。一人で悩む時間が長引くほど、本人も家族も追い詰められていきます。

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現在の私
あなたの親御さんに同じ症状が出たら、まずは「病気のサインかもしれない」と考え、すぐに専門の窓口(かかりつけ医、地域包括支援センターなど)に繋がることが、絶対に大切です。

まとめ

今回は、私の母に現れた幻覚症状への対応について、実体験をお話しました。

  • 幻覚は病気の症状。頭ごなしに否定せず、まずは本人の不安に寄り添う。
  • 一人で判断せず、必ずかかりつけ医や専門家に相談する。
  • 早く対応すれば、それだけ家族全員が救われる。

介護は情報戦であり、同時に孤独との戦いです。この記事が、同じように悩むあなたの心を少しでも軽くできれば、これほど嬉しいことはありません。

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